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伯耆流の極意は、「磯之波」の一刀にありました。流祖・片山伯耆守久安が苦行の末、武道の妙奥に達せんとして
達し得ず、京の愛宕神社に籠もること七日七晩、忽然として悟りを得て、ついに精妙を極めたのが、この「磯之波」
であるといわれます。
「磯之波」の真理は筆舌に尽くし難く、厳しい修業によって体得すべきものであり、論じて理解できるものではな
いとされていますが、その名称から真理の片鱗をうかがおうとすれば、「潮が満つれば 波は磯を打ち 潮が干ると
波は退いて 跡を留めない」
森羅万象、自然の営みはすべて天理に従うものである。武も同様に天理に従って動き、静かにその跡を残さぬもの
である━、これが伯耆守久安の武道理念の姿でしょうか。
「磯之波」はさらに説きます。
「戦を久しくせず、濁を残さず、勝ちて退くこと速やかなれば」と。
「磯之波」の真理によって作られたのが、現代に伝わる【表六本】、【中段九本】の15本です。
この15本に練達することによって、心・気・力・剣・体一の神技に近づき、ついに「磯之波」の真理を味わう境地
に至れるのでしょう。
表六本 | 中段九本 | |
一本目 | 押え抜き(おさえぬき) | 膝詰(ひざづめ) |
二本目 | 小手切(こてぎり) | 胸之刀(むねのかたな) |
三本目 | 切付(きりつけ) | 追掛抜(おっかけぬき) |
四本目 | 抜留(ぬきとめ) | 返り抜(かえりぬき) |
五本目 | 突留(つきとめ) | 一作足(いっさそく) |
六本目 | 四方金切(しほうかねきり) | 向詰(むこうづめ) |
七本目 | 長廊下(ながろうか) | |
八本目 | 切先返(きっさきかえし) | |
九本目 | 四方詰(しほうづめ) |
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